「ダブルスーツ」の着こなしにチャレンジ
近年、英国クラシック回帰の流れも後押しして「ダブルスーツ(ダブルブレストスーツ)」が流行しつつあります。2010年代の前半ごろから少しずつ見かけるようになり、ビジネスシーンに取り入れる人も増えてきています。
そこで今回は、注目度が増すダブルスーツの特徴や魅力、着用シーンや着こなしのポイントをご紹介します。
まずは、ダブルスーツとはどのようなスーツなのか、そしてどのような歴史があるのかを確認していきましょう。
「ダブルスーツ」は、ヨーロッパでは「ダブルブレステッドスーツ(double breasted Suit)」と呼ばれます。日本においては、「ダブル」や「ダブルブレスト」、「両前(りょうまえ)」と呼ばれることもあります。
フロントボタンが2列に配列されていて、ボタンの数は4つないしは6つが一般的です。フロントボタンの配列にも種類があり、ボタンが並列に並んでいるものを「オールインライン」、V字型に並んだものを「スプレッドアウト」と呼びます。
特徴はほどよい重厚感。ジャケットのフロント部分を重ね合わせてボタンを留めるため重厚感が生まれ、上品さとたくましさを演出することができます。
次は、ダブルスーツの歴史について掘り下げていきましょう。
「ダブルスーツ」の原型が登場したのは19世紀の中頃。軍人の外套や乗馬用の衣装だったものが、男性用の上着として用いられるようになったのが始まりだといわれています。20世紀の初頭には、現在とほぼ同じような形に進化しました。
日本においては、バブル期の1980年代~1990年代にダブルスーツが流行し、ゆったりとしたシルエットのものが好まれました。これは、大きくなったお腹を隠すのに都合がよく、年齢に似つかわしい重厚感や威圧感を表現できたからだともいわれています。
そのため、ダブルスーツというと「おじさんっぽい」「古臭いシルエット」、あるいはちょっと怖い人」といったイメージが定着しつつありました。そういえば、1940年代から50年代を舞台にしたギャング映画で主人公たちが着ていたのもダブルスーツでした。
しかし近年では英国クラシック回帰の流れもあり、スリーピースやチェンジポケット、グレンチェック柄などと同様に、ダブルスーツが再び注目を集めています。そして、トレンドを反映したスリムなシルエットのダブルスーツも多く登場しており、かつてのダブルスーツのイメージが変わりつつあるのです。
ダブルスーツというと、着用シーンを限られるというイメージをお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。
次は、ダブルスーツの格式や着用シーンについて確認していきましょう。
「ダブルスーツは格式が高く、シングルスーツは簡略化したもの」というイメージを持っている方は少なくありません。しかし実際には、ダブルとシングルに格式の違いは存在しません。
年配者が好んで着用するイメージや、着用時のかっちりとした印象も相まって、ダブルスーツの方がシングルスーツよりも格式高いというイメージにつながっているのかもしれません。
ダブルスーツは着用シーンが限られるというイメージもありますが、これは半分は正しく半分は誤りです。
シングルスーツと同様、本来はダブルスーツもフォーマル・ビジネス(タウン)・プライベート(カントリー)と幅広いシーンで着用することができます。
一方で、とくに年配の方のなかには、「バブル期に着用していたお洒落なスーツ」というイメージからダブルスーツはビジネスシーンにふさわしくないと考える人もいます。そのため、ビジネスウェアとしてダブルスーツを着用する際にはTPOに配慮し、場合によっては着用を控えるのが無難でしょう。
一見、着こなしが難しそうに思えるダブルスーツですが、基本的なマナーとトレンドを押さえれば、スタイリッシュに着こなすことができます。
次は、ダブルスーツの着こなしのポイントを確認していきましょう。
ダブルスーツをおしゃれに着こなすには、何よりまず体型にフィットしたスーツを選ぶことがマストです。体型に対してゆとりあるサイズを選んでしまうと、バブル期に流行していたダブルスーツのような印象になってしまいます。
とくに腰回りのラインがキレイに絞られているかどうかは入念にチェックしてください。
ダブルスーツには主に4つボタンと6つボタンがあることをお伝えしましたが、掛けるボタン数にも以下のような種類があります。
ダブルスーツは、ボタンを留めていないとジャケットが横に開いてしまいだらしない印象となってしまいます。ビジネスシーンで着用する場合には、立っているときも座っているときもボタンを留めておくようにしましょう。
また、スリーピースの場合も同様です。シングルスーツの場合、ベスト着用時はジャケットのボタンを外しても問題ありませんが、ダブルスーツの場合にはスリーピース仕様でもフロントボタンを留めておくのがマナーとされています。
ネクタイも印象を左右するキーポイントの一つです。
基本的にはシングルスーツと同じようにネクタイを選んで問題ありませんが、「シングルスーツに比べてVゾーンが狭くなる」ということを覚えておくとよいでしょう。
柄が大きいネクタイやデザインの個性が強いネクタイだと、ネクタイの存在感が大きくなりすぎてダブルスーツのシックな印象が損なわれることがあります。初めてダブルスーツにトライするのであれば、ネクタイの色味をスーツもしくはシャツと合わせることで、コーディネート全体に統一感が生まれます。
シングルスーツの場合はノータックのパンツを合わせるのが主流ですが、ダブルスーツを着用する際は、タック入りのパンツも選択肢に入れてみましょう。
ダブルスーツは上半身に重厚感があるため、タイトな印象のノータックだと上下のバランスが崩れてしまうことがあります。そのような場合は、腰回りにゆとりを持たせるワンタックやツータックのパンツをチョイスすることでバランスが良くなります。また、タック入りのパンツは、ダブルスーツのクラシカルな印象にもよくマッチします。
今回は、注目度が増すダブルスーツの特徴やマナー、着こなしのポイントをご紹介しました。敷居が高いと思われがちなダブルスーツですが、ポイントを押さえることでトレンド感のある着こなしを楽しむことができます。
今回ご紹介した情報も参考に、上品かつたくましさを演出できるダブルスーツにチャレンジしてみてはいかがでしょうか。