スーツスタイルの正統派「スリーピーススーツ」の魅力とは
クラシック回帰の流れにある近年のスーツスタイル。その中で注目を集めているのが「スリーピーススーツ」です。
今回は、英国スタイルの象徴ともいえるスリーピーススーツの魅力や着こなしのポイント、着用マナーについてご紹介します。
まずは、スリーピーススーツの特徴や起源、そしてツーピーススーツとの違いについて確認していきましょう。
スリーピーススーツとは、一体どのようなスーツなのでしょうか。
スリーピーススーツというと、「ジャケット・ベスト(ジレ)・パンツ(トラウザーズ)の組み合わせ」と認識している方も多いのではないでしょうか。
しかし厳密には、スリーピーススーツの定義は「同じ生地で仕立てられたジャケット・ベスト・パンツの組み合わせ」です。つまり、ジャケット・パンツがセットのツーピーススーツに別の生地のベストを合わせたとしても、スリーピーススーツとは言えないのです。
同じ色柄の生地で作られた3つのアイテムを揃えて着ることから「三つ揃え(みつぞろえ)」とも呼ばれます。
現代のスーツはイギリスで始まったラウンジスーツが原型とされ、その組み合わせであるジャケット・ベスト・パンツは同じ生地で仕立てられていました。つまり、スリーピーススーツは由緒正しい正統派のスーツスタイルと言えるでしょう。
その後、スリーピーススーツが簡素化され、ベストを省いたツーピーススーツが普及していきます。
伝統的なスーツスタイルであるだけでなく、スリーピース―ツにはさまざまなメリットがあります。
スリーピーススーツのベストを着用するメリットとして、例えば以下のことが挙げられます。
スリーピーススーツのメリットとして、見た目に威厳が生まれるという点を挙げることができます。
ベストを着用することで、首元からジャケットの前ボタンのあたりにかけてのVゾーンが浅くなり奥行きが生まれます。また、ネクタイをベストで固定することで立体的に見せることができ、胸元にボリューム感が出ます。
これにより、スーツ姿にたくましい印象や威厳が生まれるのです。
ベストを着用することで防寒できるというメリットもあります。
たとえば、「コートを着るまでもないけれど、ジャケットだけだと肌寒い…」といった日でも、ジャケットの下にベストを着ていれば体幹を冷やさずに暖かく過ごすことができます。
また、「外は寒いのに電車内やバス内は暑い…」というときでも、ジャケットを脱げば快適に過ごすことができます。
もちろん、真冬にはベスト・ジャケットの上からコートを着用して、さらに防寒することが可能です。
ジャケットを脱いでもだらしなく見えない点もまた、スーツにベストを着用するメリットだと言えます。
たとえばオフィス内で仕事をしているとき、ジャケットを脱いでデスクワークをしたいときもあるでしょう。
本来、ワイシャツは下着と同じ扱いのアイテムなので、ビジネスシーンやフォーマルな場でワイシャツ1枚になるのは失礼、あるいはだらしないとされていました。
しかしそんな時でもベストを着用していれば、気兼ねなくジャケットを脱ぐことができ、上品さを保つことができます。
スタイリッシュでありながら実用性にも優れたスリーピーススーツ。スリーピーススーツの選ぶ際には、ちょっとしたポイントがあります。
次は、スリーピーススーツの選び方についてご紹介します。
スリーピーススーツを購入する際に意識したいのが、ベストのサイズ感。ベストは身体に密着させるものですから、大きすぎても小さすぎても違和感につながってしまいます。
とくに、ベストの丈には注意が必要。ベストの丈が長すぎると全体のバランスが崩れ、胴長に見えてしまいます。反対にベストの丈が短すぎると、シャツが見えてしまいだらしない印象になってしまいます。
ベストの丈は、シャツとスラックスの境目が隠れるくらいの長さを選ぶようにしましょう。
スリーピーススーツのベストは、体型に合わせて選ぶのがおすすめです。
たとえば、やせ型の方であればVゾーンが浅い襟付きのベストを選ぶことで、胸のあたりに立体感が生まれます。
反対に、がっちり体型やぽっちゃり体型の方は、Vゾーンが深めの襟なしベストがおすすめです。
スリーピーススーツをオーダーする場合など、ベストのボタンを選べることがあります。
基本的には好みの色を選んで問題ありませんが、あまり煌びやかな色を選んでしまうと着用シーンが限られてしまうので注意しましょう。
正統派スーツスタイルであるスリーピーススーツには、覚えておきたいいくつかの着用マナーがあります。
次は、スリーピーススーツを着る上で押さえておきたいマナーを確認していきましょう。
意外に知られていないのが、ベスト着用時のジャケットのボタンの留め方。
本来、立ち姿勢のときはジャケットの前ボタンを留めるというルールがありますが、ベスト着用時は留めなくてもよいとされています。
また、スーツの着こなしには「アンダーボタンマナー」という、一番下のボタンは留めないルールがあります。このマナーはベストにも当てはまるため、ベストの一番下のボタンは外しておきましょう。これは、ダブル仕様のベストでも同様です。
ベストの形状とシャツの種類によっては、シャツの襟がベストの上に被さってしまうことがあります。
一般的に、シャツの襟先はベストの下に収めるのが好ましいとされています。とくに、襟の開きが大きいセミワイドカラーシャツやワイドカラーシャツを着用する場合には、襟先をベストの下に収めるようにしましょう。
スリーピーススーツ着用時は、ベルトの代わりにサスペンダー(ブレイシーズ)を使用するのがおすすめです。
スリーピーススーツにベルトを合わせると、バックルの厚みでベストの下の方が浮いてしまうほか、体勢によってはベストとスラックスの間からベルトが見えてしまいます。
サスペンダーであればこのような問題を解決できるだけでなく、スラックスの折り目も綺麗に見せることができます。
スーツの着こなしをアップグレードしてくれるベストは、基本的なルールさえ押さえておけば、決してハードルが高いアイテムではありません。スーツを新調される際、ぜひベスト付きのスリーピーススーツ を選んでみてはいかがでしょうか。