注目したいスーツのディテール「本切羽」
新たにスーツを購入する時やオーダーするときは、ディテールにもこだわりたいところ。
スーツにはさまざまなディテールがありますが、ジャケットの袖口の仕様である「本切羽」や「開き見せ」も注目すべきポイントのひとつです。
そこで今回は、本切羽や開き見せとはどのようなものか、そして本切羽が高級スーツを想起させる理由についても解説していきます。
まずは、「本切羽」と「開き見せ」の違い・特徴について見ていきましょう。
本切羽と開き見せはそれぞれどのような仕様なのでしょう。
「本切羽(ほんせっぱ)」とは、スーツのジャケットの袖口にボタンホールがあり、開閉できる仕様のこと。「本開き(ほんあき)」とも呼ばれます。
袖口に最も近い第一ボタンだけを外して抜け感を演出するなど、洗練された着こなしを楽しむのにうってつけのディテールと言えます。
一方で「開き見せ(あきみせ)」は、ボタンホールとボタンはついているものの開閉することができない仕様で、「切羽なし(せっぱなし)」とも呼ばれます。また、ボタンホールがなく、飾りボタンだけが付いているものも開き見せにあたります。
本切羽は開き見せに比べて作りが複雑で、高い縫製技術が求められます。そのため高級仕様とみなされることがあるのですが、クラシカルなイギリスのスーツでは開き見せが基本です。
一方で、イタリアのナポリでは、スーツの仕立て人が腕前を誇示したり、ライバルであるイギリスのスーツと差をつけたりする目的で本切羽を採用することがあります。「本切羽=高級スーツ」という考えは、そんなナポリのスーツ職人のあいだで浸透している風潮が関係しているようで、とくにイタリア風スーツスタイルの人気が高い日本ではその傾向が顕著だといえそうです。
しかし実際には、本切羽のスーツでもリーズナブルな価格で手に入れることができます。「本切羽=高級スーツ」という考えが普及しているので、高級感や“わかっている感”をアピールするのにも好都合といえるかもしれません。
余談ではありますが、ジャケットの袖口に初めてボタンをつけさせたのは、あのフランス皇帝ナポレオンだという説があります。ロシアへと遠征した際、寒さのせいで兵士らが上着の袖口で鼻水を拭っていたのだそう。
ナポレオンが整列する兵士らを見回りした際、袖が汚れているのを見て軍の威厳が損なわれるのを危ぶみ、鼻水を拭えなくするためにボタンをつけさせたというわけです。
他方、本切羽の起源は医療の世界にあると伝えられています。かつてヨーロッパでは、外出先で常にジャケットを脱がないのがルール。そのため、医師が診療や手術を行う際、手早く腕まくりできるようにボタン開きが備えられたのだそう。
本切羽に「ドクタースタイル」という別名があるのはそのためです。
※袖ボタンおよび本切羽の起源については諸説あります。
P.S.FAでも本切羽のスーツ を数多く取り揃えています。袖口の仕様が変わり、ほんの少しジャケットの袖口が開いて見えるだけで、シャツとのバランスに変化が生じ、コーデ全体の印象も不思議と違って見えるものです。
ちょっとしたディテールの差がスーツの見栄えを左右し、ときにビジネスライフを豊かにしてくれます。ぜひ細部に目を配って自分らしい着こなしを楽しんでみてください。